2010年10月16日 09:45
そのひとつ、滋賀県の琵琶湖の東側、「湖東」と呼ばれる地域では、地域材の使用促進を、業種を超えて考えようと「湖東地域材循環システム協議会」(Kikito)を08年に発足させました。
この協議会の発足に奔走し、呼びかけ役を務めたのは、当時、県の林業普及指導員だった山口美知子さん。林業関係者だけでなく、工務店やコンサルタント、建築事務所、NPOなど、地域材のことを一緒に考えてくれそうな人たちに声をかけました。
「マグロのトロの部分だけを使うのが今の家づくり。つまり、樹齢70~80年の大きくなった木のいいところだけを使う。そこに、山の手入れや加工など、すべての経費が乗るので、当然、今の材価に合わない。100年かけて育てた木でも利益が出ないこともあるのが現状です」
問題を認識した山口さんは「売り物にしてこなかった部分も売り物に変えていく」ことを考えます。たとえば間伐材や小径木では紙製品を、端材でカードスタンドなどの小さな木製品をつくり、すべての部材を無駄なく活用することで、トータルの利益を増やそうという狙いです。
協議会のメンバーには、デザイン会社や木工製品を扱う企業もあるので、端材を製品に変えていく技術が生かされます。
協議会では、建築構造材としての地域材の普及にも知恵を絞っています。
協議会のメンバーでもある、製材・建築会社の株式会社「マルト」の代表、澤田藤司浩さんは「以前は、施主の希望があっても、なかなか地域材を仕入れることができなかった」と言います。「琵琶湖の森で育った木を使いたいと思っても、原木市場ではどこの木か分からない」という現実にぶつかったことも。
現在はKikitoによる地域材の供給が可能になり、生産地や加工履歴をQRコードで管理しています。施工者や消費者は、顔の見える木を安心して購入できる仕組みです。 さらにKikitoでは、森林整備で生まれる環境価値を認定し、証書化するという取り組みも行っています。企業や団体と森林所有者を結びつけ、ある一定の森の森林整備を行う費用を企業などに出してもらう代わりに、Kikitoがその森林のCO2吸収量を算出し、吸収証書を発行するというものです。
「最近では企業だけではなく、地域の商工会などもパートナーとなるケースがある」と山口さんは言います。地域の環境価値を高めることに貢献したいという企業や団体のニーズをうまく取り込むことも、持続可能な森づくりにつながるのです。
........................................................